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前編、中編までは、Team Journey Supporter(TJS)という試みがいかにして生まれたのか、そしてプロジェクトの根底となったティール組織の思想についての理解を改めて深めながら、概要や中身について初お披露目をしていただきました。
後編では、それらを踏まえて感じたユーザーとしての「どんな、どのように?」という「How」を深掘りしていくセッションです。モデレーターにはエール株式会社代表の櫻井 将さんをお呼びしています。
実は、櫻井さんと嘉村さんはかつての同僚であり、ご友人という間柄ということで、和気あいあいとしながらも、よりTJSの深みへと突っ込んだ質問を投げかけていただきました。

前編

ティール組織への共感からその先へ
~ガイアックス、英治出版、場とつながりラボhome’sviの3社が手がける 新たなプロジェクト・Team Journey Supporterとは~

中編

ティールの観点からTeam Journey Supporterをひもとく
~チームが最悪の未来を避けて、どう最高の未来に歩んでいくのか~

既存のアセスメントツールやエンゲージメントサーベイとどう違うのか

櫻井さん:
ここまで下田さんや賢州さんからTeam Journey Supporter(TJS)についてを聞いてきましたが、「何が正しいか、間違っているか」というように評価の視点で見るのではなくて、「現状に気づきを与えて認識できるという点を重要視している」さらに、「そこで得た強み、特徴をこの先どうやって活かせるのかという視点」で構成されていることが、よく理解できました。
その中で、少し理解するが難しかった点があったので、その点についてお伺いさせてください。最初のほうで診断ツールではないと言っていた部分。それは、例えば社員の特徴を測定するアセスメントツール、それから会社に対しての愛着を測るエンゲージメントサーベイとの違いはどう解釈したらいいのか、この辺りをちょっと教えてほしいなと感じました。
嘉村さん:
実は、フレデリックが診断ツールをあまり好んでいないのです。日本だけでなく、海外でもティールの診断ツールというのはあるのですが、要は、診断ツールというと、作成者によるアルゴリズムによって、「すばらしい形はこうだ」、「状態のよしあしはこうだ」といった、いわゆる物差しがあって、そこで評価をされた経営者は当然もっと上を目指したくなる。けれども、それというのは内側から湧き上がった変化のストーリーではなく、外的に評価をされた物差しであって、チームメンバーの声と共に歩むものではなくなる。そういった機械論的な捉え方は好ましくないとフレデリックは考えています。
TJSの場合は、アルゴリズムによって「あなたはレッド、あなたはオレンジ」というアプローチを取るものではなく、「今、自分たちはこういう認識を持っている。共通ではこう思えているね。ここはちょっとバラバラかな」といった感じで、チームメンバーの認識の見える化に重きをおいています。それを自分たちで眺めながら対話をしていくというものなのです。

対話の意義とは

櫻井さん:
TJSでは対話にすごく重きを置いていますが、そもそも組織を良くしていくための手段というのはいくつもありますよね。その中からなぜ対話という手段を取ったのか知りたいです。
嘉村さん:
すごくいい質問をありがとう。
まず、今までの上意下達の仕組みの中では、ティールであってもその他の戦略や日々の仕事に関して、伝言ゲームのようになりやすいと感じています。自分の意思がないままというか、形骸化したプロジェクト進行が行われているようなところもあるように思えていました。
そこにきちんと対話というプロセスを挟むことによって「あ、リーダーはそういうことを言っていたのか」、「あなたの部門が言っていたことはそういう意味だったのか」という深い理解につながって、よりよい相互作用が実現できる。つまり、意識を共有しながら本当の形で、いい未来像を一緒に描いていこうよということで、コミットメントを生み出せる対話は組織をよくする手段として使えるなと感じたのです。要するにグループダイナミクスの力ですね。
下田さん:
僕も対話が得意とは言えないのですが、対話に慣れている人ってそこまで多くないのかなと思います。でも、海外の実践組織や本に出てくる実践例でも、対話プロセスが仕組み化されているところが多いんです。対話といっても、何か重たい決意を伝え合うのではなくて、例えば、少しの違和感でさえも出し合えるような、そういう何気ない部分がすごく大切だと感じています。TJSのプロセスを通して、対話に慣れていくような手段としても活用してもらえたらいいなと思っています。
櫻井さん:
なるほど。ありがとうございます。

失敗のプロセスやプロトタイプ時のリアルな声、TJSの開発秘話について

櫻井さん:
これは質問というよりも、聞けたらうれしいなという好奇心からお尋ねするんですが、「TJSのプロトタイプ中に、あー、これやっちゃったな」みたいなところ。せっかくの初お披露目の場ということで、何か失敗のプロセスみたいなのものも聞きたいです。
嘉村さん:
これはいくつかありますね。その中で、一番なのはプロトタイプ時の衝撃的なフィードバック。とあるテストをお願いしたメンバーから「こういうツールって、上司が直接言えないことをアンケート結果で押しつけたいがためのツールですよね」という意見が出ました。現場からのリアルな声が返されまして、これは本当に現場から願われるようなツールをつくらないと、今までの「もう、何回アンケートばっかり取るんですか」みたいな現場がやりたくない押しつけツールを再生産するだけだなと、かなりハッとなりましたね。
櫻井さん:
つまり、皆さんがそういう経験を何かしらされてきたということでしょうね。
嘉村さん:
そうそう。いっぱい取らされるだけで、どうせ悪いことを書いたら後で注意されるみたいな、現場の痛みも同時に感じましたね。

「改めて組織のことを深く考える機会になった」という声

櫻井さん:
下田さんの英治出版でも実際に実験をしたのですよね。そのときってどんな感じだったのですか。
下田さん:
そうですね。まずは自分たちでこれを体験して、使える、役に立つということを体験しないままリリースはできないよなということで、自ら実験台になってやってみました。
ポジティブなコメントとして僕がすごくうれしかったのは、弊社で2〜3年目の若手メンバーが、おそらく先輩たちのように早くならなきゃという焦りがあったように僕は思っていたんですが、TJSの対話を通じて「自分の強みを生かしたら貢献できるところがありそう」という声をくれたことですね。
ほかにも、「今までのワークショップの中で一番良かった。普段から考えているつもりでいたが、改めて組織のことを深く考える機会になった」という声もありました。
一方で、「進化の芽がよく分かんない」「これをオンラインでユーザーに使ってもらうのってしんどくない?」という率直なフィードバックもありました。
とはいえ、TJSで実験したことで事後プロジェクトが生まれていることもあって、全体的にはポジティブなフィードバックが多かったと思います。
櫻井さん:
プロトタイプの段階でも既にいいプロセスを回せていたのですね。このときは、ファシリテートを得意とする賢州さんがその役を務めたわけではなくて?
嘉村さん:
そうですね。下田さんが「実際に使うのはユーザーだから、素人がファシリテーションをする実験から始めないと」とおっしゃって、英治出版メンバーが自ら実験をやってくれました。
その中で、これは全くお世辞ではなくて「これ、今まででしてきたワークショップの中で一番よかったです」というふうに言っていただいたのがうれしかったです。あと、そもそも英治出版は人を大事にするとか、すごく対話が多くてコミュニケーションも整っているのですが、それでも、あえて時間を取らないと個人の価値観を話すところまではいかないんだなというところが見えてきたことなど、いろいろと気づきを得られたのでとてもよかったです。

素人ファシリテーターでも実行できるプログラム設計

櫻井さん:
僕は以前、自分がファシリテーションをやるときに賢州さんに相談を乗ってもらったことがあるんです。その時にプロのファシリテーターの凄さを実感したんですが、そういったプロのファシリテーターのエッセンスが、このTJSの対話プログラムのガイドラインには織り込まれているということですよね。
だから素人のファシリテーターでもできてしまうと。
下田さん:
そうですね。事前マニュアルとして「この対話プログラムはこういう設計で、チェックリストはこうなっています。チームをつくってくださいね」というような流れのものから、「当日はこういったプログラムでやりますよ」というものまでを、かなりがっつりとスライドで作ってくださいました。
オンラインを想定しているので、「オーバーアクションでいきましょう」みたいな配慮もされています。
櫻井さん:
ファシリテーションをよくする方からしたら、この事前マニュアルだけでもほしいぐらいですね。
嘉村さん:
もちろん組織によって改造は自由にしてくれて構いません。
下田さん:
対話当日のマニュアルもでは、スライド通りに進めていくと、最終的には1回目のプログラムでのアウトプットが残り、次回はそれを振り返りながら対話が進められるようになっているという感じです。
賢州さんを含めたhome’s viのメンバーがしっかりチームを組んで、マニュアルの作成や対話のサポートをしてくれました。今までさまざまな現場で、いろいろなユーザー相手にやってこられた対話の知恵や、例えば心理的安全性が高くない場合にはどうすればいいのかという注意ポイントもきちんと説明されています。
嘉村さん:
よく、こういう診断アンケートツールというと、その先のコンサルティングを売るため、あるいはファシリテーションを売るための営業手段として提供することも多いとは思うのですが、そうはしたくなかった。
ちゃんとこれを使った人が自らファシリテーションをできるように、ちゃんと完結できるようにという目的で落とし込んでいきましたね。
櫻井さん:
これは僕の感想になりますが、せっかくアンケートツールを使っても、結果をどうよくしていけばいいのか分からないというのが割と多いですよね。なので、すごく心強いツールなのかなと聞いていて思いました。
嘉村さん:
あと、もう一つ補足したいのですが、事前のスケジュールはしっかり定めて進めていった方が良いと思います。
下田さん:
確かに。英治出版でやってみて思ったのは、事後プロジェクトまでスムーズにいったわけではなくて、実は忙殺されてやりっぱなしの状態になりかけたのです。ですが、1か月後に振り返りの時間を設けたことで、「あのときにせっかく出たアイデアはプロジェクト化しよう」とアクションにつながりました。その点はユーザーにも促していきたい点ですね。

TJSはどんな人たちに活用していってほしいのか。製作者が考える導入条件とは?

櫻井さん:
「TJSは、こういう人にこそ使ってほしい」という条件みたいなものは何かあったりしますか。
嘉村さん:
大きくわけて2点ありますね。
まず、絶対に「なぜこのようなツールが使いたいのか」というWHYを語れない限りは時期尚早ですし、次には進めまないと考えています。
一番初めにTJSを導入したいと考えたあなたは、今の組織のどこに悲しみを感じていて、TJSを使ってどうなりたいと思ったのか、その共感ストーリーを持っていなければメンバーはやらされ感になりますよという部分が一つです。
もう一つは、1,000人ぐらいの組織が一気にこれを使ってやってしまおうというのも向いていません。
チーム単位としては、日々の用務を一緒にやっているメンバーを想定してますので、5人や15人、多くとも20人という単位で「今の僕たちの関りはどうなのだろうか」ということを問い直すものなので、大組織であれば、チームを何個かに分けてやっていってほしいです。
櫻井さん:
なるほど。そんな簡単に「ちょっと面白そうなツールを見つけたからやってみようぜ」みたいな感じではなく、きちんと熱い思いを持っていて、これをきっかけに組織をよくしていきたい情熱があってこそ機能するツールだと……
下田さん:
いや、でも面白がってやってもらうのも駄目ではないと思います。
けれども、もともとこういったツールを目にするといいますか、関心を持つということの背景には「もう少しみんなで対話をしたいな。違う角度からも見つめ直したい」というような何らかの小さな理由はあると思うのです。
なので、それがWHYとして語られたのなら、よりいいのかなと思います。
櫻井さん:
確かに。そもそも面白がってでもみんながアンケートに答えてくれる組織であるなら、その時点で結構いい関係性とも言えますかね。そういう組織は、そういう始め方もありかもしれませんね。

展望は「組織の学び合い」の呼び水となること

櫻井さん:
ここまでTJSについてのお話を盛りだくさん聞かせていただきましたが、最後に賢州さんと下田さんのほうから、これからTJS導入をしていく皆さんに向けてのメッセージをお伺いして終われればと思います。
賢州さん:
では僕のほうから。
このプログラムは多種多様なチームがそれぞれのチームらしさに気づけるものだと思っています。
ですので、例えばチーム同士や組織間で見せあっていただいて、「あなたの組織では、『対立から創造へ』という部分が強みに来ているけれども、その文化ってどうやってつくったの?」あるいは「実は、昔こういう事件があってね。でも、そのときにこういう研修を入れてみたんだ」という話ができるような、チーム間や組織間を飛び越えながら進化をしていける呼び水となっていってほしいです。
そして、いつかフレデリックや海外の人から見た日本の組織が「日本って十把一絡げの組織ばかりかと思っていたのに、いつのまに面白い事例がこんなにできたんだ?」と思われるようなものを一緒につくっていけたのならと思います。
下田さん:
診断ツールに批判的なことも言いましたが、今ある既存のツールを決して否定したいわけではありません。多分、それにも役割はあると思うのです。たとえば、TJS後に見えた課題をよりクリアにするために使う方法はありだと思います。
また、とある組織開発のコーチの方とTJSについて話したこともありましたが、その方は「今やっているリーダー向け研修のプロセスで取り入れてもいいかもね」と仰っていました。
TJSだけを使うのではなく、他のさまざまなツールやプログラムと組み合わせて使ってもらうことは大歓迎ですし、多方面で使っていただけるようになれば、すごくうれしいです。

関連イベント

2020年11月9日

BRIGHT AT WORK〜ティール組織の研究者と実践組織が作り上げた 対話と自律型組織を促すTeam Journey Supporterとは?〜

※本記事は、上記イベントでの登壇内容を記事化しています。

登壇者プロフィール

嘉村 賢州

  • 場づくりの専門集団NPO法人場とつながりラボhome’s vi 代表理事
  • 東京工業大学リーダーシップ教育院 特任准教授
  • 「ティール組織(英治出版)」解説者
  • コクリ! プロジェクト ディレクター(研究・実証実験)
  • 京都市未来まちづくり100人委員会 元運営事務局長

集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。研究領域は紛争解決の技術、心理学、脳科学、先住民の教えなど多岐にわたり、国内外問わず研究を続けている。実践現場は、まちづくりや教育などの非営利分野や、営利組織における組織開発やイノベーション支援など、分野を問わず展開し、ファシリテーターとして年に100回以上のワークショップを行っている。2015年に1年間、仕事を休み世界を旅する。その中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、日本で組織や社会の進化をテーマに実践型の学びのコミュニティ「オグラボ(ORG LAB)」を設立、現在に至る。

下田理

  • 英治出版プロデューサー
  • アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)認定ファシリテーター

1981年福岡県生まれ。ITコンサルティング企業勤務を経て現職。ソーシャルビジネス、平和構築、組織開発、教育分野の本をプロデュース。『ティール組織』『なぜ人と組織は変われないのか』『私たちは子どもに何ができるのか』などを手がける。
日本初のティール組織のカンファレンス「Teal Journey Campus」の開催(2019年)、チームの自律的な進化を支援する「Team Journey Supporter」の設計・開発(2020年)など、書籍編集以外の事業開発にも携わっている。
好物:アイリッシュ音楽、ギネスビール、ビリヤード、サウナ

櫻井 将

  • エール株式会社 代表取締役

新卒でワークスアプリケーションズに入社。営業で社長賞を受賞後、人事総務部のマネージャーを経て、GCストーリーでは営業・新規事業開発・子会社の責任者を歴任。両社でGPTW「働きがいのある会社」ランキングにてベストカンパニーを受賞。
2017年より現職。副業人材 約800名で構成する社外人材を活用したオンライン1on1サービス「YeLL」を展開し、2017年野村総合研究所主催のハッカソンbit.Connectにて最優秀賞。2019年HRアワード プロフェッショナル部門にて入賞。感覚的・定性的に語られがちな社内コミュニケーションを再現性のある状態まで科学する。
また、慶応義塾大学大学院SDMの研究員として「個の幸せと組織の生産性が両立するコミュニケーション」の研究を行う。

関連サービス

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「リモートで対面コミュニケーションが減った中でも、チームのモチベーションを上げながら対話の場を作りたい。」
ティール組織の理論に基づいた約29項目の「組織の強み」から自社の強み可視化します。更に、レポート結果を元に対話を促すことで、自社らしい自律的な組織進化を支援します。

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