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2018年に英治出版から出版されたフレデリック・ラルー氏著『ティール組織』。新しい組織づくりのあり方を示す本として多くの経営者やビジネスパーソンから共感を得て、発売されてから約2年で10万部を突破するまでに至っています。
今回は、フレデリック氏の思想・哲学に共感を持ち翻訳出版に携わった英治出版・下田理さん、場とつながりラボhome’s vi・嘉村賢州さん、そしてティール組織の実践企業であるガイアックスによる新たなプロジェクト「Team Journey Supporter(TJS)」について、同じくティールの思想とも通じるコミュニケーションに重きを置き「オンラインによる1on1サービス」を提供しているエール株式会社の代表・櫻井 将氏をモデレーターに交えてセッションを行いました。
その様子を前編、中編、後編の3回に分けてお届けします。
前編は、TJSの開発経緯や中身に関する下田さんからのお話です。

ティール組織の反響とともに届いた皆さんからの本音、ティール導入の失敗事例。それがTJSプロジェクトの芽吹く種となった

下田さん:
元をたどれば、やはり『ティール組織』への大きな反響からすべてがスタートしました。このジャンルで、600ページある本の中では、驚くほど多くの人に読まれ、その結果いくつかのブックアワードにも選んでいただきました。
その後、僕自身もティール組織に関する知見を深めようと、著者のフレデリックさんに会いに行ったり、海外のカンファレンスに行ったりして、日本で学びを深めるイベントを行っていました。
1年前には、フレデリックさんを招いて「Teal Journey Campus」という日本初のティール組織に関するカンファレンスを開催したのですが、オンラインを合わせて600名以上の皆さんにご参加いただきました。
ですので、ここ1、2年でティール導入を実践される企業というのが本当に増えています。賢州さんや僕のところには成功の話も入ってきますし、反対に「社長がティールを目指すと言い出したんですけれども、現場が大混乱に陥りました」というマイナス面やティール導入の失敗事例という声も多くいただいているのです。

失敗の背景には、ティール組織の在り方やフレデリックさんのメッセージに対する誤解も多いと感じた

ティール組織というと、「自律的で自分自身のことを何でもできる意識の高い人が集まらないと無理だ」とか、「ティールこそがいい組織だ」という見方も多く見られるんですが、組織の発達段階を取り上げて「うちの会社はレッドだから、アンバーだからよくない」というのは望ましいことではないと感じます。
このことはフレデリックさんも本の中で繰り返し触れていて、「ティールは正解でも目指すべきものでもないし、前の発達段階を否定するものでもない」と色んなところで書かれています。
実はティール組織の実践で失敗する背景にはこういった誤解があのではないかと、僕たちは感じていました。
フレデリックさんが本の中で伝えているメッセージがちゃんと伝われば、あるいは実践者との交流を通して学びを深めていくことができれば、もっといい変化に結びつきそうなのに、とやきもきしていたんです。
そんな矢先、Teal Journey Campusのカンファレンスでもご登壇いただいたガイアックス代表の上田さんから、「ティール組織の知恵を使って、チームの状態の見える化や進化を支援できるようなツールをつくりたい」という旨を賢州さんと弊社にお声がけいただきました。「それいいですね!」と僕らも二つ返事で、去年の11月頃に3社合同のプロジェクトが始動しました。

コンセプトメイキングは数か月かかった。喧々諤々の議論を経てたどり着いた「ポジティブアプローチで、対話を通じたボトムアップの進化をサポートする」というコンセプト

それから、どんなツールをつくりましょうかということで、3社が集まってコンセプトを考えました。TJSの中身の部分ですね。
すると、「ティール組織の知恵を詰め込みたい」「でもティール組織は目指さないツールにしたい」「ティール診断ツールにはしたくない」「内省のヒントにもなってほしい」という、相反する・矛盾するお題がたくさん出てきました。
数か月ぐらいかけてずっと議論して、プロトタイプによる実験もしてようやくたどり着いたのが、「ポジティブアプローチ」でした。ティール組織の考えでは、組織の進化に決まった形はなくて、いろいろな在り方があっていい、と捉えています。それを実現するのが「自分たちらしさの探求」で、ポジティブアプローチが合っているのではないか、という考えに至ったのです。
もうひとつ大切にしたい点が、小さな声にも進化のヒントがあって、「みんながいろいろな声を出せるようになってほしい」ということでした。だから、「対話を通じたボトムアップの進化をサポートする」というコンセプトが固まりました。
また、ティール組織は目指さないのだけれども、やっぱりその知見はどこかに必要だということで、最終的には「進化のヒントとして情報提供しよう」ということになりました。
なので、「ティール」やそれにまつわる専門用語は、このプログラムのどこにも出てきません(笑)。また、「診断ツール」ではなく、「対話を重視したプログラム」と捉えていただいてほしいと思っています。

TJSプロセスは、「WHY(なぜ)の共有」が大前提

実は、このプログラムを実際に進めていく際には事前の導入プロセスが重要です。
TJSはチームで進めていくものですから、チームメンバーから共感を得る必要があります。
例えば、年度末に人事部から送られる社内アンケートのように、「じゃ、この質問に回答しておいてください」だけで済ませられるものではありません。
まず、「なぜ、みんなとTJSを一緒にやりたいのか」という、企画者やリーダーのそもそもの思い、「WHY」を事前に共有していただくことようにご提案しています。
そうでないと、メンバーはやらされ感を持ったり、TJS自体がどんな目的のものなのか理解できなかったり、「結局はティール組織になろうとしているんでしょう」といったイメージを持ったりしてしまいます。
ですので、ぜひWHY(なぜ)の部分を共有してください。
そこからTJSのプログラムに入っていきます。アンケートは15分から30分あれば答えられるという至って簡単なものです。対話プロセスはオンラインを想定して、2時間×3回のマニュアルを用意しています。あとは1ヶ月後位に振り返りを行って、フォローアップしていく、というのが大まかな一連の流れですね。

 

「自分たち(チーム)らしさ」をTJSでどう見つけられるのか

このプログラムの中で、どうやって自分たちのチームらしさを見つけていくのかという部分ですが、まず、アンケートで「自分たちの強み・特長」を聞いていきます。そうするとチームとしてどの部分を強みとして認識しているのかがわかる。
その後、対話プロセスでアンケート結果を活用しながら、「今後チームがどうなっていきたいのか」「みんなが今どう思っているのか」などを話し合いながら探っていきます。
強み・特長項目は、ティール組織やインテグラル理論の知見を取り入れています。『ティール組織』では、人類の歴史の中でこれまで現れてきた組織の在り方を「レッド」「アンバー」「オレンジ」「グリーン」のように整理していますが、フレデリックさんが本の中で言っているとおり、古いから悪いというわけではなく、それぞれのモデルに良い発明があると僕らも思っています。
たとえば、レッドの活力・エネルギーは「前に進む力」になるし、アンバーのような「秩序・明確さ」は日々のオペレーションを回すのに必要です。同様に、オレンジの合理性はビジネスに役立つし、グリーンの人間性や感情はチームワークに大切です。
これらを統合するような形でアンケート内の項目を洗い出していきましたが、どの項目が強みになるかはチームにいる人たちやタイミングによって違うでしょう。エネルギーが必要なときがあるかもしれませんし、もうちょっと感情や人間関係を大事にするべきフェーズかもしれない。それを話し合うことは、とても重要だと考えています。
これらを可視化するレポートの「強み・特長探求シート」では、ポジティブな回答が多かった項目順に「Strength(強み候補)」「Sub Strength(次の強み候補)」「Potential(伸びしろ候補)」の3つの領域で示しています。

ティールの要素は「進化の芽」として探求する

では、ティール組織そのものの知恵はどこへ行ったのかというと、強み・特長とは区別した「進化の芽」と表現していて、アンケートで探るようにしました。
たとえば、「個人のパーパスの探求」「凸凹(でこぼこ)の活かし合い」「リーダー不在のチーム」のようなものです。
そのチームの中でちょっと芽生えているものには星1つ、大分芽生えているものには星2つという形で表現しています。
軽く事例を紹介すると、賢州さんのhome’s viでは、「強み・特長」については割と人間性の項目が上位に来ていて、英治出版では、文化とか価値観が上位に来ています。「進化の芽」については、ホームズビーは色々と芽生えていることがわかり、英治出版のほうはそれよりは少ないという形です。
ただ「進化の芽」はあくまでも探求・進化のヒントとなってほしいという目的ですから、別に芽生えていなくてもよくて、目指すべきものでもありません。

ちなみにそれぞれのレポートには、項目ごとの詳しい内容までは表示されません。ですので、「チームの強み・特徴解説資料」と「進化の芽の解説資料」で詳細な情報を提供しています。
強み・特長では、その強みの内容だけでなく、「弱い場合」「強すぎる場合」の問題点も述べています。また、その強みを伸ばすために関連している進化の芽も併記しています。また、進化の芽のほうでは、その項目を伸ばすためにとれるアクションや、NVCやプロセスワークなど、方法論として確立されているアプローチも紹介しています。これがあることで、「今度NVCのセッションを受けてみようか」というような次のステップが見えてくるかもしれません。

 

ポジティブ部分だけを見るのではなく、チームの健康状態も考える

また、チームの今の健康状態や課題部分も可視化するレポートの「現在地探求シート」も用意しています。ポジティブアプローチであっても、やっぱりちゃんと課題にも向き合う必要があるからです。
たとえば、チームをどれくらよい状態に思っているか、どれくらいの情熱を持っているのか。また、あなたの目には周りのメンバーの状態はどう映っているのか、ということを聞いています。
また、「強み・特長探求シート」ではみんなが強みだと思っているものが上位に出るようになっていますが、メンバーの中には「いや、自分はチームの強みとは認識していない」と思っている人もいるかもしれません。その「認識のずれ」が大きい項目をいくつか出しています。
もう一つ、「カラーバランス」として、それぞれの色ごとに回答を集計し直したものがあります。色の偏りを示すことで、チームのバランスや不足しているところが見えてくるかもしれません。もちろんこれも良い悪いではなく、探求のヒントとして示しています。

 

自分たちでファシリテーションができるように、対話マニュアルも用意

このように「強み・特長」「進化の芽」「現在地」という3種類の情報をレポートでお渡しするのですが、これをもとに対話を行っていくことになります。
最低限チームメンバー自身で対話ができるように、事前準備から当日の内容まで揃えたマニュアルを提供しています。こちらが用意したプログラムに拘る必要はなく、カスタマイズしてもらって構いません。
また、「チーム内でのファシリテーションが難しい」「全員が対話に集中したい」というようなニーズがあれば、外部のファシリテーターに依頼するのもまったく問題ありません。もちろんこちらから紹介することも可能ですが、そのチームのことをよく知っているファシリテーターがいればその方にお願いしたほうがいいかもしれません。
TJSがこちらのファシリテーションの営業手段にならないように、そこは区別しています。

いずれにしても、きちんとマニュアルが機能することを検証するためにも、実際に英治出版で社内のメンバーがファシリテーターとなって実際に対話プログラムを行いましたが、オンラインで最後のアウトプットまで走り切れました。
改善ポイントだけでなく、「どんなところを伸ばしたいか」という対話ができたことで、実際にプロジェクト化してコアチームが結成し、色々なアクションが生まれています。

以上、TJS(Team Journey Supporter)の開発背景や大まかな概要を説明してきました。次は賢州さんにバトンタッチをして、TJSについて、ティール組織の視点からひもといてもらいたいと思います。

関連イベント

2020年11月9日

BRIGHT AT WORK〜ティール組織の研究者と実践組織が作り上げた 対話と自律型組織を促すTeam Journey Supporterとは?〜

※本記事は、上記イベントでの登壇内容を記事にしています。

登壇者プロフィール

下田理

英治出版株式会社 プロデューサー
アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)認定ファシリテーター

1981年福岡県生まれ。ITコンサルティング企業勤務を経て現職。ソーシャルビジネス、平和構築、組織開発、教育分野の本をプロデュース。『ティール組織』『なぜ人と組織は変われないのか』『私たちは子どもに何ができるのか』などを手がける。
日本初のティール組織のカンファレンス「Teal Journey Campus」の開催(2019年)、チームの自律的な進化を支援する「Team Journey Supporter」の設計・開発(2020年)など、書籍編集以外の事業開発にも携わっている。
好物:アイリッシュ音楽、ギネスビール、ビリヤード、サウナ

関連サービス

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ティール組織の理論に基づいた約29項目の「組織の強み」から自社の強み可視化します。更に、レポート結果を元に対話を促すことで、自社らしい自律的な組織進化を支援します。

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