ワーケーションという新しい働き…
近年、オフィスに通勤しなくても、自宅やカフェなどのインターネット環境を使って仕事をする「テレワーク」という働き方が拡がりつつあります。
しかし、テレワークには、メリットだけでなくデメリットも存在します。今回は、働き手と企業側、それぞれの視点からテレワークのメリットとデメリットを考えます。
【働き手から見たテレワークのメリット5つ】
まずは、働き手にとってのメリットを考えてみます。次の5点は、テレワークの代表的なメリットと言えます。
【1.通勤時間をなくすことができる】
特に首都圏では、車ではなく、電車通勤をしている方が多いのが実情です。朝、夕のラッシュ時には、身動きが取れないほど電車内が混み合います。そのような環境だと、通勤するだけでも疲れてしまいます。
しかし、テレワークの場合にはオフィスに出勤する必要がないため、通勤時のストレスを受けることもなくすぐに仕事に取りかかることができ、仕事にエネルギーを注ぐことができます。
また、通勤に使う時間を仕事の時間に充てることもできます。
【2.子育てや介護をしながら働くことができる】
近年、日本では待機児童問題が課題となっていますが、子どもを保育園に預けられない場合でも、テレワークであれば自宅で子どもの面倒を見ながら仕事をすることができます。
また、インターネット環境の整ったコワーキングスペースなどを活用する場合、託児施設のあるコワーキングスペースを活用すれば、子どもを預けながら近い場所で仕事をすることができます。
子育てだけではなく、介護をしなくてはいけない場合にも、テレワークであれば空いた時間に自宅で仕事をすることができます。
【3.住む場所を選ばない】
1つ目に挙げたメリット、通勤がなくなると、住む場所がオフィスの場所に左右されなくなります。そのため、首都圏から地方に引っ越すことがあったとしても、退職する必要がありません。
また、結婚後にパートナーが海外転勤になってしまったとしても、テレワークであれば仕事を継続することが可能です。
インターネット環境のある場所であれば仕事を継続することが可能ということを考えると、日本国内、海外問わず、旅をしながら仕事をすることも実現できます。
【4.作業に集中しやすい】
オフィスで働いていると、電話を取ったり、誰かに話しかけられたりすることで、仕事の手が止まってしまうことがあります。また、周りの声やオフィス内を行き交う人目を気にする方がいるかもしれません。
テレワークであれば、自宅やカフェなど、自分の集中しやすい場所で仕事をすることができます。
【5.家事との両立がしやすい】
オフィスで働いていると、平日は帰宅して夕食をとり、お風呂に入って寝るだけという方も多いかもしれません。
テレワークであれば、自分の時間を自分で組み立てることができるため、すき間時間に家事を進めることができ、仕事と家事を両立しやすくなります。
【働き手から見たテレワークのデメリット3つ】
次に、働き手から見てテレワークのデメリットについて考えてみます。
【1.自分で時間管理しなければならない】
自宅でも仕事ができるということは、早朝でも夜中でも仕事ができてしまうということでもあります。仕事を詰め込みすぎて長時間労働になったり、昼夜逆転の生活になってしまうことがないよう、休息の時間を取ることも必要です。
【2.IT端末を使った仕事に限られる】
テレワークは、パソコンやタブレット端末、携帯電話などを使って行うことのできる仕事に限られます。
しかし、ITエンジニアやWebデザイナーなどの専門スキルを要する仕事はできない、と悲観的になる必要はありません。資料作成やメールの返信など、部分的にテレワークが可能な業務もあります。テレワークで実現できることと、自分のスキルを照らし合わせて、自分にできる仕事を探してみることが大切です。
【3.運動不足になりやすい】
通勤がないこと、またパソコンなどの端末に向かう仕事のため、運動不足になりやすいです。
家の中でもストレッチをする、散歩や買い物に行くなど、意識的に体を動かして運動不足を解消することが大事です。
【企業から見たテレワークのメリット3つ】
政府は「働き方改革」に取り組み、今後もテレワーク導入企業を増やしていく方針です。
最近では、正社員に対してもテレワークを導入している企業が増えつつあります。社員がテレワークを利用できることにより、企業にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。
【1.リスクを分散することができる】
日本では、2011年3月11日に東日本大震災が起き、避難生活を余儀なくされ、新しい仕事に就かなければならなくなった方もいました。
そのような背景から、「1か所にオフィスを設けるのはリスクである」という考え方が拡がり、企業としても災害などのリスクが発生した場合に重要業務が中断しないよう「BCP(事業継続計画)対策」を講じる必要性が出てきました。
テレワークを導入することで、本社とは別の場所でも事業を継続することができ、交通網が麻痺することがあったとしても出勤する必要もありません。
【2.離職率の低下】
日本マイクロソフトでは、2011年2月に「ワークスタイル変革」を進めるためにテレワーク制度を導入し、女性の離職率を40%も下げることに成功しました。
日本では結婚をすると、男性よりも女性の方がキャリアの変更をしなければならない場合がまだまだ多いのが実情です。テレワーク制度が導入されたことで、出産・夫の転勤・介護などの事情により退職せざるを得なかった女性たちが、仕事を継続できています。
企業としても、採用した人材を手放さずに済むのです。
【3.ワークライフバランスが良くなることで生産性も上がる】
自動車業界では、2006年に日産が初めて在宅勤務制度を導入しました。
導入後も、制度を使いやすい内容に改定していき、2014年には最大月5日、30分単位での在宅勤務も可能としたことで、在宅勤務制度の利用者数は改定前の3倍(管理職を含む3400人程度)にまで増加しました。
社員からは、子育てと仕事との両立がしやすくなった・海外との早朝や夜遅いやり取りも自宅で行うことができるなど、在宅勤務を利用して良かったという声が上がっています。家庭と仕事との両立ができている満足感や、自宅で休憩や食事をとった後に仕事に向かえることから、在宅勤務をすることでプライベートの時間に対する満足度も上がり、仕事の生産性も上がると感じている社員の方が多いようです。
【企業から見たテレワークのデメリット2つ】
それでは、企業にとってテレワークのデメリットはどのような点が考えられるのでしょうか。
【1.時間管理が曖昧になりやすい】
オフィス外で働くことになるため、働いた時間をどのように管理するのかは企業ごとにルールを作る必要があります。
パソコンの作業履歴やWebカメラなどを使って管理するなど、どのように管理をすれば煩雑にならず、個人の責任でテレワークが運用できるのかよく検討する必要があります。
【2.IT端末のセキュリティ管理が煩雑になりやすい】
IT端末を使って仕事をするため、セキュリティ対策は必須です。
自宅以外で仕事をする場合には、端末の紛失や、パソコンの画面をのぞき見されるリスクがあります。また、カフェなどで仕事をする場合には、公共のWi-Fiにつなぐことでウイルス感染のリスクも考えられます。
セキュリティ対策についても企業側でしっかりとルールを作り、制度を運用することが求められます。
【まとめ】
テレワークは、働き手と企業にとって、メリットだけでなくデメリットもあります。しかし、デメリットについては、政府の「働き方改革」の推進制度や企業の成功事例やツールを参考にしながら、解決策を練ることができるように整ってきています。このような成功事例やデメリットに関する情報を事前に収集・活用し、働き手と企業の両者にとってバランスの良い働き方を考えることから始めると、テレワークは導入しやすくなっていくと思います。導入・運用に関するデメリットをクリアした先には、働き続けることができる人が増え、働き手と企業にとってメリットがあると言えます。
【参考URL】
http://www.adecco.co.jp/vistas/adeccos_eye/41/
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