ワーケーションという新しい働き…
前回は、ティール組織を導入する3つのポイントの1つに「ティール組織をゴールにしない」というものを紹介しました。東邦レオでは、ティール組織の導入以降も変化を止めることなく、また新たな制度というのを取り入れています。
ですので、今回は、ティール組織を生かしながらも変化させていくという中身や現在の状況、あとは、私たちが考える一緒に働きたいなと思う人材についてという部分を伝えていけたらと思います。
ティールとヒエラルキーをダブルで使う
ティール組織を導入したものの、東邦レオの仕事というのは建設業やものづくりのところもまだまだ多く、あんまりティールにしすぎても逆に効率が悪くなってしまいます。ですので、2019年の末ぐらいからはティールとヒエラルキーをダブルで使うようにもなりました。建設業や、ものづくり、リノベーションのところでは、ある程度の階級、伝達の組織体制をつくり、顧客などのプロジェクト中心でチームをつくるときにはティールという具合です。コンサルや金融などがやっているようなチーム分けで、顧客担当みたいなのをつけている感じと言えるでしょうか。
そして、今の東邦レオを全体的に見ると、よりコミュニティ・ディベロップメントというところの確立もできています。例えば、今は大阪の中津というところでビールを醸造するブルワリーというのを建設してるのですが、それは別に、ビールを売るというのが目的ではありません。住民さんたちと一緒にホップを育てて、それを収穫します。そして、そのところ独自のクラフトビールを造るということからコミュニティをつくっていこうというプラットホーム事業です。
最初にあったようなものづくりから、よりコミュニティのほうにシフトをしているという感じでしょうか。
Departure制度の導入
同じく去年「Departure制度」とういう新たな人事制度を設けました。これは、年齢関係なく「あ、この人はもう慣れてきているな」という人、例えば6、7年やって、いろいろな仕事に慣れてきている人というのに対して、今日から今の仕事をしないでくださいというような、一瞬にして仕事を失う「強制社内失業をさせる」制度を設けました。3か月から半年に1回ぐらいのペースで選定をするのですが、これは50代から、下で言うと30代。活躍している、活躍していないは関係なく、1回につき5人ぐらいです。
これは何のためにやるかというと、自分でさらに自分の仕事をつくろうとできるか、仲間に自分が一体どういうことで貢献をできるのかというのを、挑戦と学びを早く回すことによってキャリアを築いていくという目的です。
でも、本来は自分のタイミングでそういったものを見つけ出して挑戦をしていくというもので、そこを半ば強引にやるわけですから、もちろん反発や戸惑いというのも大きくありました。ティール導入のときと同様に、特に50代であったり、ベテランメンバーのところが不安や不満というか、どう動いたらいいか分からないというのがありました。
そして、対象者の決め方ですが、強制とは言いつつも「明日から、Departureだけれども、どう?」という形で面談をしながらやるという感じです。その人に可能性があるから、これをチャンスと捉えて動いてみませんかという意味合いで、ベテランの方々に声を掛けています。
Departure制度の効果
また、これはすごく効果がありました。決まったルートの営業であったり、決まったお客さんであったり、決まった仲間と接していれば仕事が成り立っていたベテランさんにとっては、そういったものが取っ払われるので、自分の持っているノウハウや知識をフルに出さざるを得ないのです。そうなると、そういうのは新人にとっては助かります。逆に、どう動いていいのか分からないというメンバーに関しては「手伝ってください」と若手のほうからも声をかけやすくなりますので相乗効果になるというわけです。
そして、今で言うと「20代・50代プロジェクト」といった、20代と50代で「30代と40代を挟み撃ちにして会社を盛り上げるぞ」という動きに対しても、影響をもたらせています。
今の評価制度
前回、Blue・Green・Redの3色を使って自己評価をする施策をお話ししましたが、根本的な部分に変わりはありません。その上で、同世代とかの仲間と8人グループにして、自分の評価を発信し、それに対して仲間から徹底的にフィードバックを受けるという評価制度を導入しています。
自分でつけた評価よりも周りからの評価が少しでも高いほうが、ちゃんと正しい評価ができているということですので、よりちょっと自分に厳しくなります。しかし、下げすぎてしまうとそれは謙虚すぎたり、謙虚からも外れたところになってしまうので気をつけないといけません。
フィードバックをもらうことによって、自分の評価をもう一回、客観的に見直します。そして、「ちょっと高すぎたかな」とか「低く見積もりすぎていたな」というのを感じ、そこの微妙なラインを探す。正しく皆が自己評価をできるようにというのをやって、最後にはおむすびをむすんで皆で仲良く食べる(笑)ということを4時間の間にやるという、そんな評価制度を敷いています。
東邦レオの現在の状況
ティール組織にそのような変化を加えながら「結局ティール組織を導入した結果はどうなの?」という部分、現在の東邦レオの状況についてですが、あえて建設業のところの売上げを下げて、そこの効率を図ってコミュニティビジネスのほうに転換をしています。つまり、売上を下げつつ利益を上げるということです。
副作用も当然ゼロではない
ティール組織に伴うさまざまな施策や変化を導入して2年ぐらいになりますが、どうしても自由な風土というのになかなか慣れることができない、自ら転びにいくというのが「しんどいな」と感じてしまったりしたメンバーもいて、数名が辞めてしまいました。そこに関しては副作用というふうに捉えています。
新型コロナウイルス感染症という環境の中で
また、今年で言えば4月からはコロナの影響で完全に在宅という形になりました。しかし、そういった中でも3つほど、行っていることがあります。
まず1つ目はオンラインサロン。
もともと、社内でオンラインサロンをやりたいというのを考えていたのですが、コロナを機に2か月ぐらい前倒しをして始めました。1日、朝、昼、夕方、それから18時以降からはオンラインスナックという名のオンライン飲み会のようなことを合わせて毎日4コマやっています。講師は全員“社員”。自分の得意や好き、を講座として仲間へ共有し、相互に学ぶサロンとしています。
2つ目は「東邦レオ大学院」のようなもの。
これは、先ほどのオンラインサロンとは別です。顧問である大学の教授にご協力を頂いて、客観的に「東邦レオの歴史からどう学べるか」というのを、体系立てて学ぶというものになります。歴史や理念をもう一回学びなおすことにもつながりますし、そういった大学院みたいなものを二軸で始めました。
また、経営のスキルみたいなものも入れ込みながら、組織論、経済の実際の考え方、さらにブランドビジネスについてとか、テーマを決めながら同時並行でやるというのを、今のこの在宅というときだからこそ、録画をしながらいろいろとやっているという感じです。
3つ目はアートサロン。
うちはkudan houseという、九段下にある築95年の洋館を運営していますが、そこで、これも以前からやろうと考えていたアートサロンというのをオンラインにしてやろうということになりました。急にアートというのを出してしまいましたが、東邦レオのCSVの考え方、社是の考え方と合っていれば打ち手は何でもいいよとなっています。ビールホップであれアートであれ、ビジネスの手段は何でもいいよというものです。
東邦レオで社会の縮図をつくりたい
ここまで、ティール組織の導入経緯や、実際の取り組みや、変化していくことなどについて話してきましたが、最後に、私たち東邦レオが考える、一緒に働きたいと思う人材という部分について触れて、終わりにしたいと思います。
定性的なものは3つ。
まず1つは、何でもいいので「自分にとっての情熱の火種」を持っていることです。
前に話しましたが、私で言うと登山ですね。中身は登山であろうが何であろうが、CSVに則って、社会に対して価値のあるビジネスにできるようなものがあれば何でもいいのです。
2つ目は、情熱の火種を絶やさないことです。
単発で燃やすというのはできると思いますが、長く燃やし続けることは簡単ではありません。それを、仲間と一緒に燃やし続けていけるということが大切です。
3つ目、これが一番大事なところです。何より、東邦レオのメンバーもしくは社外の協力者、その社外の協力者の仲間たちと一緒に、皆で遂行していくというのをやりたいといった志向性があることです。
また、自分たちが働かなくなった後世にというか、自分たちが社会人を卒業した次の代や、そのまた次の代に、どう残していけるかみたいなのを考えられるというところや、そこに自分が糧になれるかということです。定性的なところで言えば、この3つです。
私たちで言うと、結構そのようなところがお客さんに好かれたり、ファンができたりするというところにつながっています。ですので、それらを組み合わせて、生きもののように組織運営をしていきましょうという感じです。能力などは、高い人もいれば、とても低い人もいますし、私も「情熱だけあって、頭脳は後ろに置いてきているタイプ」ですし、ストレス耐性だって強い人も弱い人もどちらもいます。
あえて言うのでしたら、この社会の縮図みたいなものを東邦レオでつくりたいという感じです。
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登壇者プロフィール
菅 将人
東邦レオ株式会社 人財戦略室
ニックネームは「ガースー」。サラリーマン登山家
大分生まれ大阪育ち。近畿大学農学部卒業後、2013年より東邦レオへ入社。名古屋を拠点に中部エリアで木造住宅部門の営業・工事・メンテナンスを担当。
その後2017年、人財戦略室を立ち上げ。採用をメインとした人事を中心に、写真・動画によるプロモーション、Webメディア、アート制作などを兼務。
今年、オンラインサロンCSV大学(仮)を立ち上げ予定。
山が死ぬほど好きで、7大陸最高峰登頂を目指す山バカ。国内では夏季を中心に初心者向けの登山ツアーを企画。
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「リモートで対面コミュニケーションが減った中でも、チームのモチベーションを上げながら対話の場を作りたい。」
ティール組織の理論に基づいた約29項目の「組織の強み」から自社の強み可視化します。更に、レポート結果を元に対話を促すことで、自社らしい自律的な組織進化を支援します。